2025/03/21
歌舞伎絵【三枚続11組 45,350円】
買取日記ジャンル
今回は「歌舞伎絵」をまとめて三枚続11組を買い取りさせていただきました。
歌舞伎絵とは
画像: 東洲斎写楽 – 三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛 (Wikimedia Commonsより)
出典: Wikimedia Commons, File:Toshusai Sharaku – Otani Oniji, 1794.jpg
ライセンス: パブリックドメイン
※参考画像であり、今回の買取品には含まれておりません。
浮世絵といえば、まさに上にある「東洲斎写楽作『三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛』」のように、特徴的なポーズを取り、より目をする役者たちの歌舞伎絵を思い浮かべるのではないでしょうか。写楽の代表作品のように、歌舞伎役者の迫力ある表情やしぐさを誇張して描くことで、舞台上の生き生きとした姿をそのまま紙に再現するのが歌舞伎絵の大きな特徴です。
歌舞伎絵とは、一般的に肖像画の一種であり、歌舞伎役者の姿や演目の名場面を描いた作品を指します。単なる役者の肖像にとどまらず、観客を魅了した舞台のワンシーンを切り取ることで、当時の人々が劇場に足を運ぶきっかけとなって、宣伝の役割も果たしていました。劇場の外で販売されることも多く、ファンにとっては推しの役者を手元に置いて楽しめる貴重なアイテムだったのです。
また、江戸時代において浮世絵は、単なる美術作品としてだけでなく、情報伝達としての機能も持っていました。現代のポスターや新聞のように、どのような演目が上演されるのか、どんな役者が出演するのかを広く知らせる手段だったのです。当時はテレビやラジオがないため、人々はこうした浮世絵を通じて最新の芝居情報を得ることができました。
「夢物語盧生容画」 とは
今回買い取った浮世絵の中から、執筆者が特に紹介したいのは、次の三枚続です。
左から順に配役(役者):半香(澤村 訥子)・おたか(坂東 秀調)・華山(市川 團十郎)・老母おりを(市川 左團次)
絵師:豊原国周
演目:夢物語盧生容画
上演場:新富座
「夢物語盧生容画」は、明治19年(1886年)に新富座で上演された歌舞伎作品で、高野長英の生涯を題材としています。
この作品は、河竹黙阿弥(かわたけ もくあみ)が脚本を手掛け、全七幕十五場から構成されていました。
医者・蘭学者(オランダ語を通じて日本に伝わった西洋の学問を研究した学者)である長英は、西洋から医学や軍事技術を学び、さらに蘭学塾を開いてその知識を広く共有することで若い人材を育成するなど日本の近代化に貢献しました。その立場ゆえ開国の必要性を訴え江戸幕府の異国船打払令にも反対しましたが、幕府による蘭学者たちへの激しい弾圧 「蛮社の獄」によって投獄されてしまいます。その後、脱獄・逃亡を経て活動を続けましたが、壮絶なクライマックスを迎え、最期は自害することとなりました。
この浮世絵には、渡辺崋山が筆を持ち、絵を描いている場面が描かれています。崋山は蘭学者・画家・政治家であり、長英と同様に幕府の政策を批判したことで牢に閉じ込められた人物です。「夢物語盧生容画」 の主人公は高野長英ですが、あえて華山が描かれた理由は不明です。ただ、その理由は配役にあるのではないかと執筆者は推測しています。実際、九代目市川團十郎が 「崋山」 役を演じていました。
九代目市川團十郎は、歌舞伎の歴史に名を刻んだ名優であり、彼の功績は現代の舞台にも生き続けています。役者として多くの浮世絵に描かれました。それらの浮世絵が現代でも大切に保管されていると考えれば、それ自体が名誉なことと言えるでしょう。
今回の買取について
状態の良さ、市場での評価、そして作品が持つ歴史的価値などを総合的に判断し、三枚続11組を45,350円とさせていただきました。
下表は今回、買取額をつけさせていただいた版画の一覧です。似たジャンルの版画のご売却をご検討中の方はご参考まで。
絵師 | タイトル | 買取額 |
豊原国周 | 夢物語盧生容画 | 2,220 |
豊原国周 | 八陣守護城 | 10,100 |
歌川国貞 | 黒禾詞曲曲輪達引 | 5,100 |
歌川国貞 | 仲之町鞘當の場 | 6,200 |
守川周重 | 桑名屋徳蔵入船物語 | 3,330 |
豊原国周 | 積恋雪関扉 | 3,550 |
豊原国周 | 勧進帳 | 3,800 |
豊原国周 | 山門五三桐 | 3,330 |
豊原国周 | 千歳曽我源氏礎 | 2,220 |
豊原国周 | 千代萩御殿場 | 2,400 |
歌川国貞 | 太閣記十段目 | 3,100 |
スタッフJ