2024/10/07
数学・物理・化学書、植物関連書籍の買取【284冊 60,175円】
買取日記ジャンル
今回はなんと284冊もの書籍をお譲りいただきました。それもなんと、当店が特に力を入れている専門書が大多数…!
おかげさまで、良い査定額をお付けできたものが多数ございました。買取額が500円以上のものに絞りましても、なんと23冊!
下表にてご紹介しております「固体物理の基礎 (下・1) 固体フォノンの諸問題 (物理学叢書 48)」は、カバー欠品の状態のため残念ながら減額となりましたが、それでも504円での査定となりました。
当店では水濡れや付属品の欠品等の再販が難しいものを除き、上記のようにカバーのないものや、多少の書き込みがあるものなどでも積極的に買取りを行っております。
「本の状態があまり良くないから…」と二の足を踏む前に、当店の書籍・雑誌における状態ごとの買取の可否をご覧いただきぜひご検討ください!
さて、専門書の買取と販売を得意とする当店ですが、今回お譲りいただいた分野(特に物理学)の学問的な内容については、本記事の中の人は全然得意ではありません…
門外漢の中の人がそれについてお伝えするのも難しいかと思いますので、純粋に私が興味を惹かれた本を選ばせていただきました!
まず1冊目はこちら
人名反応に学ぶ有機合成戦略
(ISBN:4759810684)
表紙を一瞥して目に入った回路図を見て「クエン酸回路かな?」と思い手に取った生物学寄りの私でしたが、全然違いました。
タイトルは「人名反応に学ぶ有機合成戦略」。
原著は「Strategic applications of named reactions in organic synthesis : background and detailed mechanisms」、ラズロー・カーティ氏とバーバラ・ザコー氏によって2005年に発行されました。
それが2006年に富岡清氏監訳のもと、株式会社 化学同人から刊行されたものが本書になります。
さて、「人名反応」という言葉に馴染みがない私でしたが、科学の分野に限らず、偉大な発見・発明にはその方のお名前が付くことが多く、本書も有機化学の分野で人名が冠された反応にフォーカスした内容となっていました。
そしてその特徴はと言いますと、とにかく見やすく、そして親切です。
・250もの人名反応のひとつひとつを、統一された構成で見開きに収めるレイアウト。
・重要な記述のみならず、標的化合物のどこに合成された中間体があるかなどを視覚的に示す色分け。
・付属CD-ROMにPDFで記録された文献。
統一されたレイアウトと見開きで完結しているおかげで、非常に見やすい
有機化学合成という膨大な情報を学び、ほとんど手探りのような状態で研究する方にとって、「これほど欲していた本は他にないのでは?」と思うほどに、利便性と信頼性を兼ね備えた内容でした。
索引も何種類もあって調べやすい
そんな先達の知識と熱意と閃きが凝縮されたこの1冊。必ず次に必要とされる方につなげなければと感じるのでした。
続きまして2冊目。
世界のラン大図鑑
(ISBN:4385162468)
こちらも訳書となっており、原著は2017年発行の「The Book Of Orchids」、著者はマーク・チェイス氏、マーテン・クリステンフース氏、トム・ミレンダ氏の3名、 日本語版は横田昌嗣氏(琉球大学海洋学部教授)監修により三省堂より2020年に刊行されました。
大図鑑の名にふさわしく、ページ数656、厚さはなんとおよそ5cm!
紛うことなき大図鑑
ランってそんなに種類があるの?という疑問を見透かされたかのように、「はじめに」の1行目には「749属2万6000種」と書かれていました。ちなみに本図鑑への掲載は野生のラン600種が厳選されています。
そして、ランの説明の中で進化や受粉についての言及があるのですが、その中に「ランは遺伝子の劣化を防ぐために、なるべく他家受粉をするように巧妙に進化した種」ということが述べられています。
どのように巧妙かというと、まず花粉が昆虫の体にしっかり付くので、昆虫自身の力では取れないのだそう。
そして蜜を作らないのに、「蜜がありますよ」と言わんばかりに蜜がある花の特徴に似せたり、さらには昆虫のメスの姿まで擬態したうえでフェロモンに似た「におい」を出したりするのだとか。おそるべし…
このように、花粉を運んでくれる媒介者にしっかりとターゲットを絞って、戦略的な進化を遂げていることを知りました。ただ「綺麗で良いかおり」と感じる単純な私よりも、ランの方がよほど頭が良さそうです。
そして、「バニラビーンズ」は「バニラ プラニフォリア」というラン科の花の種子だということも初めて知ったのでした。またひとつ賢くなった。
左ページがみんな大好きバニラ
なお、栽培方法等は載っていませんので、「ランを長持ちさせたい…」という方はうっかり吸い寄せられないようご注意ください。
最後に3冊目は下表には載らなかったものからご紹介。
天に向かって続く数
(ISBN:4535798060)
こういうタイトル好きなんです。ついつい開きたくなります。
著者は加藤文元氏と中井保行氏、発行は日本評論社より。買取額は270円となりました。
第1章は「2乗してもとにもどる数」。小学生の娘とともにインド式計算法に触れたお父さんが「ある発見」をする、という物語から始まります。
私も中学生のころ、平方数や素数について自分なりに夢中になって法則を調べようとしたことがありました。
特に平方数については、「1つ前の平方数に、その平方する前の数と次の数を足したら、次の平方数になるんだ!」(例:10^2+10+11 = 11^2)という、今となってはかわいらしい発見をして喜んだものです。もっとも、
(x+1)^2
=x^2+2x+1
=x^2+x+(x+1)
と変形すれば自明ではあるのですが。でもそういう体験って大人になっても覚えているものですよね。
そんな自分語りはさておき、話を戻しましょう。「ある発見」とは、第1章タイトルである「2乗してもとにもどる数」を指していました。
具体的にどういう数かというと、「平方した結果の末尾に、平方する前の数が含まれる」という特徴を持つ数です。
25^2=625
625^2=390,625
76^2=5776
376^2=141,376
といった感じですね。
「お父さん」のその話を聞いた高校時代の恩師が、これらの2系列に絞ってさらに調べていったところ、ある不思議なことに気づき、また無限に続くかに見えるその特徴から「天に向かって続く数」と表現します。
そしてそこから無限等比級数の和や長方形の面積に思い当たったところで、物語は終わり初等整数論へと入っていくのでした。
このへんとってもわくわく
上記のようなちょっとしたことから始まる探求が、「大変含蓄の深いものがあり、多くの豊かな数学的世界に連れて行ってくれる」と著者のあとがきにありますが、「数遊び」と「数学」が繋がり始めるあたりのわくわく感はすごくわかる気がします。
2章からはしっかりみっちり初等整数論なのですが、基礎的なことから歴史的なお話まで丁寧に説明されているので、入門編としても大変親しみやすい1冊だと感じました。
他にも興味深い本が目白押しでしたが、いつも通りごくごく一部ながら写真とリストにして掲載させていただき、締めとさせていただきます。
この度も貴重な本を多数お譲りいただき、ありがとうございました!
スタッフK
これでたぶん4割弱くらいです…!
(買取額は市場の需要と供給のバランスにより変動するため、現在とは異なる可能性がございます。上記は2024.10.05時点の金額です。)