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スタッフブログ 買取日記

2024/10/04

土屋光逸「瀬戸内海 鞆之津」【1点 82000円】

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以前の記事で木版画(浮世絵)、石版画、銅版画など、ジャンルを問わず幅広く版画の買取を行っているとお伝えしましたが、「新版画」も例外なく買取歓迎です。

今回、お客様から素晴らしい作品をお譲りいただきました。

土屋光逸「瀬戸内海 鞆之津」

土屋光逸の新版画「瀬戸内海 鞆之津」

土屋光逸は、近代日本を代表する木版画家の一人です。彼は、日本の風景を題材とした多くの作品を残しており、その中でも「瀬戸内海 鞆之津」は特に人気が高い作品の一つです。

この作品は、日本の美しい風景を木版画という伝統的な技法で表現した傑作として知られています。
穏やかな波、遠くに浮かぶ島々、そして静かに佇む船など、鞆の浦(とものうら。鞆の津の別称)の風景が細密かつ繊細に描かれています。特に、夕暮れの柔らかな光が水面に反射する様子が特徴的です。
木版画ならではの重厚な質感と、鮮やかな色彩が、作品に深みを与えています。版木への彫りと摺りの技術の高さも、この作品の完成度を高めています。

 

数々の作品にインスピレーションを加えてきた“鞆の浦”

この作品の題材となった風景、鞆の浦とは広島県の瀬戸内海に面した沼隈半島南端にある港湾およびその周辺海域です。

鞆の浦沖で瀬戸内海に流れ込む複数の海流がぶつかり、干潮時と満潮時ではその海流が逆転する現象が起こるため、かつて沼隈半島から瀬戸内海を船で横断するためには、この鞆の浦で潮流が変化するのを待たねばなりませんでした。そのため、ここ鞆の浦は「潮待ちの港」として万葉集にも登場するなど、大変長い歴史を持ちます。

その古くからの町並みを抱いた美しい景観から刺激を受け、宮城道雄はかの有名な箏曲『春の海』を作曲しましたし、宮崎駿はジブリ作品『崖の上のポニョ』を作成するため、ここに1ヶ月滞在したと言われます。

 

新版画について

土屋光逸は、新版画を代表する画家の一人ですが、そのキャリアのスタートは木版画家で、途中で石版画制作にも取り組んでいます。

新版画とは、日本の浮世絵の伝統を継承しつつ、明治時代以降に西洋の版画技法を取り入れて発展した版画の総称です。浮世絵が主に江戸時代に大衆向けの娯楽として発展したのに対し、新版画はより芸術性の高い作品として制作されてきました。

時代と共に浮世絵が衰退していったことや、自身が病を患ったこともあり、土屋は一時画業を離れた時期もありました。しかし、60歳を超えてから版画家の渡辺庄三郎に見出され、川瀬巴水、吉田博と並び称される新版画家として大成したのです。

 

今回の買取金額について

昭和15年に摺られたこの版画は、状態が大変よく保存されており、色も鮮やかで、市場での評価も高い作品です。版の状態の良さ、市場での評価、そして作品が持つ歴史的価値などを総合的に判断し、82,000円とさせていただきました。

似たジャンルの版画のご売却をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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