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スタッフブログ 買取日記

2024/10/11

精神医学書などの買取【約280冊 39,100円】

今回は特に精神医学や神経科学を中心とした医学書を買取いたしました。

医学書は高い。中古では…?

医学書って高いですよね…。医学部に通うためにはお金がかかるイメージですが、これだけ専門書が高ければ仕方ないような気がします。

例えば、今回一番の高額査定(本記事一番下の「高額査定商品一覧」表をご参照ください。)となったこちら

『不随意運動の診断と治療 改訂第2版 動画で学べる神経疾患 DVD付』梶 龍兒 (編),2016,診断と治療社

は新品定価ですと19,800円です…!

元がそれだけ高価な本ですので、中古品でも「ちょっと気軽に」買うような値段ではないかも知れませんが、それでも新品に比べれば、やはり少~しはお得にご購入いただけます。爪に火をともすような苦労をされている学生さんや、若いお医者さんにはこういった中古品が救いになるのではないでしょうか。お売りいただいたお客様、ありがとうございます。

DVDもきちんと付属していました。しかも、未開封!

さて、こちらの本は、自分の意思とは関係なく身体が動いてしまう不随意運動について書かれた医学書です。

本書では、踊るように身体を振る症状が出る「舞踏症」や、身体を細かく震わせる動きが出る「振戦」など、主に大きく分けて13症例が紹介されています。

不随意運動を専門的に診る医学的領域は神経内科かと思われますが、それ以外の専門医療分野、例えば小児科、整形外科、精神科などの外来でもそのような症状を抱えた患者さんが診られるケースは多くあったことでしょう。そして、それらの知見が積み上げられ、近年では劇的な効果が上がる治療法(本書の第2部 ボツリヌス治療、第3部 外科的な治療 を参照)も考案されてきたそうです。

しかしながら、いざ患者さんを眼の前にした時、それが「不随意運動」と呼ばれる動きなのかを診断するのはなかなか難しいことのように思えます。

そこで役に立つのがこのDVDです!こちらには218本もの動画が収められており、実際の患者さんの様子を観て・確かめて・診断に役立てることができるのです。しかも、その上でその動きが何故出てしまうのか、具体的な治療にはどんなものがあるのかが詳細に説明されており、現役で働く医師には役立つ臨床ハンドブックとして、これから神経医学を志す初学者にも易しい入門書として、重宝されているようです。

奥が深い精神神経医学の世界

上の『不随意運動~』ではわりとメジャーな神経障害、またそれに付随する精神症状などが紹介されていますが、2013年に改訂された「DSM-5」(精神障害の診断と統計マニュアルの5版)では掲載が削除されたような稀な精神症状を紹介した本もありました。こちらの…

『精神神経症候群を読み解く: 精神科学と神経学のアートとサイエンス』Julien Bogousslavsky 編著,吉野 相英 監訳,2020,医学書院

には、たとえば擬娩症候群(クーヴァード症候群とも呼ばれる。パートナーの妊娠をきっかけに男性が妊娠に似たつわりなどの症状を経験する疾患)や、ガンザー症候群(的はずれな回答をしたり、意識が混濁したりする症状が現れる)などの稀にみられる精神症群が紹介されています。

珍しい症例について知れることだけでも好奇心を刺激されるのですが、医学書でありつつも、それらの症状の歴史的背景や、概念の変遷を追っている点が非常に面白く、民俗学や社会学にご興味のある方にも“刺さる”のではないかと思います。

本書内をチラッと。こちらは14世紀から17世紀にかけ、黒死病を追うかのように流行ヨーロッパで集団発生した「ダンシング・マニア」という症状を紹介した項への挿絵です。

どういった症状かというと…

「ダンシング・マニアが発生すると、熱狂的かつ官能的な常軌を逸した踊りの群衆に加わり、一心不乱に皆で踊り続け、路上で身もだえながら、ついには疲れ果てて倒れ込んだという」

(「」部、p222引用)。

 

・・・怖いですね。現代風に考えてみるならば、原因は集団ヒステリー的な何かだったのかな?と推察するわけですが、毒蜘蛛のタランチュラに咬まれることが原因(タランティズム)とする説や、当時の宗教的・儀式的な背景が原因だったのではないか?など近代以降になっても様々な説が唱えられているようです。

ところで…

脱線しますが、『ブルグミュラーの25の練習曲』という教本の中に「タランテラ」という曲があったのを覚えていらっしゃる方はいますか?ピアノを習ったことのある方ならレッスン過程でほぼ通過することになるであろう有名な曲ですが、このタイトルはこの曲に限られた曲名ではなく、3/8または6/8拍子のテンポの速い曲全体の名称だったりします。そして、その名前はイタリアの「タラント」という街に由来し、さらにその街がある地方に住むという伝承をもつ毒蜘蛛の名前が「タランチュラ」なのです。

上述した「毒蜘蛛に咬まれたことで発症するタランティズムを克服するには、患者はタランテラを踊るべし」という伝承があったらしく、このスタイルの音楽が数多く作られたらしいです。いやはや…本書中では「タランティズムを緩和できたのは音楽だけだった。」(p221)と軽く触れるにとどめていますが、今後「タランテラ」を聴くときにはイメージがガラッと変わってしまいそうですね。

 

そうそう、こちらの本は『精神神経症候群~』と“精神科学”と“神経学”がくっついた形のタイトルになっていますが、最近では両者は個別の専門領域とみなすのが普通なようです。

しかし、あえてそこを合体させている意図は本書のまえがきにも記されており、本書全体を貫く著者の想いの現れなのですが…

紙幅が足りませんのでここまで!ご興味のある方は是非本書をお求めください!

付属品の欠品にご注意を

上の『不随意運動~』の例ではDVDでしたが、こういった付属品類がきちんと付いて売られているかは買取額に非常に大きく影響します。

特に今回の本の場合、DVDの動画に付けられた番号と本書本文中に記された動画番号がリンクした内容となっているため、DVDが欠品してしまっていると本の中身の理解度もかなり落ちてしまうのです。

そのため、DVDが欠品している場合には買取額が0円となってしまいます。

ほかにも語学系の書籍に付いているリスニング用のCDなどが欠品の場合も買取ができません。

これからの売却をご検討してくださっている方で、付属品が欠品しているものがある…という方は、できましたら予め送る荷物の中からそっ…と、その本を除いていただけますとありがたいです。申し訳ありません!

痕跡本という言葉

古本にある書込みであるとか、挟んだまま忘れられたメモですとか、あるいは汚れや破れ、とにかく前の持ち主の手にあるときに残された、前の持ち主の痕跡のある本を「痕跡本」と呼ぶそうです。(『痕跡本のすすめ』古沢 和宏 (著),2012‎,太田出版 参照)

確かに、前の持ち主の方が頭を捻って導き出した人生訓であるとか、ふと頭に浮かんだらしきポエムが書き込まれていたり、もう無くなってしまった書店のレシートなどが挟まっていると、査定作業をしながら「味わい深い…」と思わず手を止めてしまうことも多く、そこに古本ならではの良さがあったりもするのですが、何がどうやってそれらの欠片が個人情報に結びついてしまうか分からない昨今です。

当店では個人の特定につながりそうな情報はしっかり削除してから再販しておりますので、ご安心ください。

お名前が書かれていた部分。字消しスタンプで消し、上からテープで保護します。

天に押印のある場合でも字消しスタンプで消します。

今回の高額買取商品一覧

以下のような買取額となりました。表の下に注意書きをしてありますが、これらの買取額はあくまで査定時点での買取額となります。

特に医学書は内容が古くなると、その価値がかなり落ちてしまうため、新版・改訂版が出るとこちらのお値段も下がる可能性大です。

医学書を使用されなくなりましたら、是非、早めのご売却をご検討ください。

『精神障害のある救急患者対応マニュアル 第2版』『ストレスチェック面接医のための「メンタル産業医」入門 改訂第2版(働き方改革関連法対応)★電子版付き★』『精神分析という営み―生きた空間をもとめて』『抗菌薬ドリル~感染症診療に強くなる問題集』『精神科身体合併症マニュアル 第2版』『多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023』『脳MRI 3.血管障害・腫瘍・感染症・他』『精神神経症候群を読み解く: 精神科学と神経学のアートとサイエンス』『連合野ハンドブック 完全版: 神経科学×神経心理学で理解する大脳機能局在』『高次脳機能障害の理解と診察』『不随意運動の診断と治療 改訂第2版 動画で学べる神経疾患 DVD付』

クリックすると拡大表示されます。

(買取額は市場の需要と供給のバランスにより変動するため、現在とは異なる可能性がございます上記は2024.10.01時点の金額です。)

 

今回も良書をたくさんお売り頂き、誠にありがとうございました!

スタッフN

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