2022/04/22
書道や日本美術関連書籍の買取 「葛飾北斎 初摺 北斎漫画(全)」(2005年、小学館)
買取日記ジャンル
今回は書道のテキスト(臨書・書手本など)・DVD・CD等日本の文化に通じる多くの書籍CDを幅広く買取させていただきました。古典書道のテキストなど人気のあることが多く、比較的お値段が付きやすいかと思います。CDなども積極的に買取させていただいています。古典のDVDなど思わぬ高価買取価格が付くこともございます。迷った際は是非当店をご利用ください。以下に特に良い査定額をお付けできたものを紹介いたします。
「葛飾北斎 <初摺> 北斎漫画(全)」
「臨書を楽しむ〈1〉欧陽詢 九成宮醴泉銘」
「臨書を楽しむ〈3〉褚遂良 雁塔聖教序」
「川本喜八郎作品集 [DVD]」
などなど。
さて、今回ご紹介させていただくのはこちら
「葛飾北斎 初摺 北斎漫画(全)」2005年、小学館
絵手本というジャンルの書籍となります。とても美しい本だったので思わず手にとってしまいました。葛飾北斎といえば、小中高校の教科書からはじまり、美術館、書籍、ポスター等様々なところで一度は目にしているであろう超有名な浮世絵師ですよね。「富嶽三十六景」があまりに有名ですが、絵手本というものもとても有名だそうです。かなりの本に出会っていると自負していますが、1冊にまとまったものは初めて手にしました。分冊となっている書籍は見かけるのですが、、、。
余談ですが、最近子供に葛飾北斎を覚えさせようとして、富嶽百景を描き壁に貼ったというエピソードを持っています。子供には北斎漫画のほうが受けは良かったかもしれません。
本書は各30丁全15巻が1冊にまとまっている原寸多色版絵手本集となります。世界最多1258冊に達する三浦満氏の「傅神開手 北斎漫書」コレクションから最新厳選された遺存状態の最も良い初摺本が用いられたとても貴重なものです。三浦氏は「北斎漫画」80セットを超える驚異的なコレクションをお持ちだそうですが、半分は海外からの買戻しで、海外のほうが状態が良かったそうです。あの北斎でさえ顧みられなかった時代があったとは驚きですが、祖国を離れた異郷の地で高く評価され大切に保存され、それが国内再評価の折に偉大な絵師の貴重な資料として帰国をしたというのはいささか皮肉でもあります。日本文化を海の向こうで守ってくれた海外のコレクターたちに感謝しましょう。
小説家の橋本治さんが「漫画漫筆」という題名でこの本の解説を書かれていますが、とても分かりやすく北斎漫画の見方、なぜ「漫画」と呼ばれるのかというようなことが書かれていて、より楽しくページをめくることができます。曰く、「「富嶽三十六景」が北斎の絵で描いた長編小説の名品であるとするならば「北斎漫画」は北斎が絵で描いた随筆の名品だからである。」とあります。なるほど。漫画とは私たちの身近にあるストーリー漫画ではなく、北斎が絵で描いた随筆の名品、ということですね。
編のはじめには序文解釈が載せられているのでより分かりやすくなっていると思います。
動植物から日用品、建築物、風景、大衆人物、幽霊、妖怪、神様、仏様様々な当時の様子が生き生きと描かれていて、素晴らしいです。ちょっと笑っちゃうような描写も北斎の遊び心を感じることができます。
最後に学習院大学教授小林忠先生と、「北斎漫画」蒐集家の浦上満氏の対談があるのですが、北斎の偉大さがわかりやすく語られています。
興味深かったのは、あの有名なマネが「北斎漫画」を模写したらしいことです。モネは「北斎漫画」を所蔵し、北斎を大変意識していたそうです。印象派、西洋近代美術に浮世絵をはじめとする日本美術が多大な影響を及ぼしたという見解があり、そのきっかけとなったのがこの北斎漫画であるということです。
多くの人を虜にしてやまない北斎、その原点となるような北斎の魅力にあふれる1冊だと思います。
改めて北斎の素晴らしさ、日本文化の技術の高さを感じることができました。
今回も良本をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました。
スタッフT