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2022/02/10

数学書の買取 【32冊 買取金額 14,470円】「線形代数と群の表現〈1・2〉 (すうがくぶっくす20・21)」朝倉書店

今回は前回に引き続き数学書を買い取りました。以下に特に良い査定額をおつけできたものを紹介します。

「現代の量子力学(下) 第2版 (物理学叢書)」
「線形代数と群の表現〈1〉 (すうがくぶっくす)」
「線形代数と群の表現〈2〉 (すうがくぶっくす)」
「幾何学〈3〉微分形式 (大学数学の入門)」
「岩波オンデマンドブックス 散乱の量子力学 並木美喜雄・大場一郎 著 2015年 岩波書店」
「解析力学と微分形式 (現代数学への入門)」
「ゲージ場の量子論〈1〉 (新物理学シリーズ)」
「群と表現 (理工系の基礎数学 9)」
「素粒子物理学の基礎〈1〉 (朝倉物理学体系)」
「ベクトル解析30講 (数学30講シリーズ)」
「クォークとレプトン―現代素粒子物理学入門」

などなど。

今回はタイトルに明示している通り、32冊で査定額合計が14,470円となりました。上記リストにあるのはすべて1冊あたり500円以上のものです。中でも

「現代の量子力学(下) 第2版 (物理学叢書)」
「クォークとレプトン―現代素粒子物理学入門」

1冊1,000円超えでした(査定時2022年2月現在)。

このように、数学・物理学関連の専門書は新品でも販売額が高いこともあり、中古品でも高い値段で取引させていただくことが多くあります。医学書なども同じような傾向がありますが、違う点は数学書の方が出版から比較的時間がたっていても値段が下がりにくいことです。特に類書や新版が出されるペースが遅いジャンルのものは高価買取が期待できますので、ご不要になった数学書・物理学書など理系専門書をお持ちの方は是非当店にお譲りください。

さて、毎回リストから気になる1冊を選び出すこのコーナー。今回はこちらにしてみました。

「線形代数と群の表現〈1〉 (すうがくぶっくす)」
「線形代数と群の表現〈2〉 (すうがくぶっくす)」(ともに2001年、平井武著 朝倉書店)

はじめにお断りしておきますが、こちらの記事を担当しているのはゴリゴリの文系人間です。故に、本書における数学的独自性、魅力を十分に紹介しきれないところが心苦しいのですが、数々の書評で高評価されている様子だったのでピックアップしてみました。

数学専門書の買取をしているとよく見かけるのがこの「群」に関する本なのですが、あまり一般の方々には馴染みのない言葉かと思います。かく言う私もこの仕事を始めるまでは遭遇したことのない用語だったのですが、少しでも知りたいと思い一般向けの数学入門書・解説書を読んでみることが多くなりました。

そのうちの1冊が、以前こちらのブログでもご紹介した数学ガール/ガロア理論 (数学ガールシリーズ 5)でした。こちらでも出てくる「ガロア」が「群」の概念の発見者。今回の「線形代数と・・・」の導入部でも、もう1人「群」の発見に功績のあった数学者アーベルと共にガロアについて触れ、「群とは何か?」という基本的な知識から抑えています。(ガロアが決闘が原因で亡くなったという衝撃的な豆知識も何気なく添えられています。)

さて、内容ですが、著者は「はじめに」で「高等学校高学年(あるいは大学文系学生)程度の数学の素養を仮定して書かれている」と本書を紹介し、読者に数学的専門知識を前提とすることは求めないとしてはいるのですが、うーん、それはどうでしょうか・・・。

思わず、「線形代数学」のwikipediaページを確認してしまったのですが、線形代数学の基礎的な概念となる「行列」の履修は高校数学課程において必修ではなくなってしまっているらしい(なんとタイミングよく令和4年度から復活する)こともあり、さすがに理科系大学生以外の人にとっては本書は難解なのではないかと思います。

かくいう私、上記「数学ガール」でガロア群の「さわり」だけをさらっていたこともあり、本書「線形代数と・・・」の第1部の途中までは「ああ、これはあの本でいうとこのアレね」と分かった部分もありました。が、既述したようにゴリゴリの文系人間です。数学的な用語と表記方法やルールに圧倒されてしまい、改めて壁の高さを思い知ったのでした(苦笑)。

とはいえ。

本書は「群の本質はそれがある対象に「作用する」ことであることを種々の具体例から会得して」、「群の「作用」の数学的純化としての「群の表現」の理論を、現代の物理学など自然科学への応用例を具体的に計算することを通して実感的に体得する」ことに力を入れ工夫がされていることを感じ取ることはできました。

例えば、この本のために専門家に描き下ろしてもらったという「太陽風の図」など、群論の表現がどのような分野での応用に使われているのかを実感することで、抽象的になりすぎている現代数学をより身近に感じることができます。また、こちらの2冊の最後の方にはなりますが、かのアインシュタインの特殊相対性理論と群がどのように関連してくるのかなど壮大に展開していく部分は、詳細は理解できずとも誰しもがロマンを感じるところではないでしょうか。

著者の平井氏の専門研究対象は、群論の中でも「リー群の無限次元線形表現」という分野で、研究を始めた当初は数学者の中でもマイナーな領域だったそうです。数学に通じていない素人が発しがちな疑問に「そんなもの、研究してなんの役に立つの?」というアカデミーに生きる人を逆なでする言葉がありますが、平井氏の中で、だからこそ「一般人にも線形表現の存在意義について知ってもらいたい!」という思いが強くなったのでしょうね。

その思いを反映するかのように、本書は読み物としても楽しめるように、ところどころに「閑話休題」として話題となっている事項の歴史的背景など、ちょっとした「こぼれ話」が挿入されていて良い感じの箸休めになっています。

また、文系者にハードルが高いことには変わりはないのですが、数学で用いられる「記号の約束」として表記方法についての一言メモも用意されていることろも丁寧です。

・・・最初に明言してしまったように、文系人間には敷居の高い数学書であり、本書長所を述べるにはあまりに私は非力ですので、最後に本書の(「1」・「2」の2冊を通した)目次(抄)をご紹介して終わりたいと思います。著者いわく、関連する部分のみ拾い読みしても1つの参考書になるよう工夫して書かれているそうなので、興味のあるところだけピックアップして理解を深める、または復習してみるのも良いかもですね!

 

第1部 入門:群とその表現、および線形代数
1 群とは何か?
2  二面体群、多面体群
3 置換群、およびb群の置換表現
4 多面体群の置換表現と行列表現
5 線形代数入門

第2部 具体的な群、および群の作用と線形表現
6 置換群 A4、S4、A5と多面体群の構造
7 ユークリッド空間の運動群
8 群の関数への作用、群の線形表現
9 表現論入門

第3部 多面体群と置換群の表現、および表現論基礎
10 二面体群Dnの表現論

11 多面体群の表現と置換群の表現
12 多面体群の表現と置換群の表現
13 表現論基礎
  

※以下、 4部から〈2〉巻に掲載※

第4部 非ユークリッド空間・ユークリッド空間と物理学
14 球面および楕円形日ユークリッド空間の運動群
15 ミンコフスキー空間、ロバチェフスキー空間とローレンツ群 
16 線形代数基礎
17 ロバチェフスキー空間上の幾何学、ローレンツ群と分数変換群
18ニュートン力学とユークリッド運動群

第5部 関数への群作用と群のユニタリ表現 
19 ベクトル値関数への群作用と1-コサイクル
20 線形代数中級
21 積分に対する群作用、それから生ずるユニタリ表現
 
第6部 群の表現論と現代物理学
22 表現論中級
23 表現論過去・現在
24 ローレンツ群・ユニタリ群と現代物理学
   

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

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