2021/04/16
心理・発達に関する書籍の買取 「うわわ手帳と私のアスペルガー症候群」
今回は臨床心理や発達障害に関する本を中心に多数のお品を買取させていただきました。特に良い査定額をお付けできたものを以下に紹介いたします。
「エビデンスに基づいた吃音支援入門」
「医療心理学実践の手引き―出会いと心理臨床」
「強迫性障害治療のための身につける行動療法」
「DVにさらされる子どもたち-加害者としての親が家族機能に及ぼす影響」
「不安障害の認知行動療法〈1〉パニック障害と広場恐怖―不安障害から回復するための治療者向けガイドと患者さん向けマニュアル」
「うわわ手帳と私のアスペルガー症候群」
「臨床発達心理士わかりやすい資格案内 [第3版]」
「ライフサイクル、その完結」
「心理測定尺度集〈2〉人間と社会のつながりをとらえる“対人関係・価値観”」
「心理測定尺度集〈1〉―人間の内面を探る“自己・個人内過程”」
「軽装版 アンガーコントロールトレーニング」
「キャンパスのセクハラ対策 調査・紛争処理編―法的対処を踏まえた運用“進化”と危機管理 (高等教育ハンドブック)」
「自分さがしの瞑想―ひとりで始めるプロセスワーク」
「TATアナリシス―生きた人格診断」
などなど。
上記リストを見るだけでも、結構幅の広い問題を取り扱っているということがお分かりになると思います。査定額はさほど高くはなくリスト外にはなりましたが、摂食障害や強迫性障害に関する本などもありました。
摂食障害もパニック障害も、ここ最近でようやっと言葉が浸透してきた感がありますよね。ですが、言葉がメジャーになっていくのとは裏腹に、当事者への理解が進んでいるかというと…難しいところだと思います。かく言う私もそこまで多くの当事者の声を聞いたことも著作を読んだこともなく、今回ピックアップした本でその無知を少しでも埋めたいと思ったのです。
その本がこちら
「うわわ手帳と私のアスペルガー症候群」(2008年、株式会社クリエイツかもがわ)
アスペルガー症候群と診断されている10歳の女の子が自分のことを書いた「うわわ手帳」を紹介した「第1部 うわわ手帳」と、その子のお母さん目線で書かれた女の子との関わり・感じ方についてまとめた「第2部 ありのままのあなたで」の二部構成、プラスして専門家などによる「応援メッセージ」4件が掲載されています。「うわわ手帳」部分では、彼女の書いたイラストがふんだんに挿入されていて、彼女の見ている世界観がリアルに伝わりますよ。
さて、アスペルガー症候群です。みなさんはどういったイメージをお持ちでしょうか?ネット上ではよく「アスペ」と略され、そのイメージは必ずしも良いものではありません。曰く、「わがまま」であったり、「空気が読めない」であったり・・・。
本書で登場する「さと」ちゃんには触覚や聴覚の過敏さや、急な予定の変更に対応できない、曖昧さが許容できないなど、よく「アスペルガー症候群(以下AS)」の人にみられると言われる特徴があります。そのため、学校に行くと異常に疲れてしまったり、パニックになって「うわーっ」となってしまったりする(それを、「うわわ」と彼女は呼んでいます)ため、普段の生活の中でも特別な配慮を必要とする状態です。その「うわーっ」となる原因が「うわわ手帳」には色々書いてあるのですが、うーん、これを知らなかったら確かに「わがまま」な行動をしているように見えてしまうかも知れません。
というのも、発達診断のASの基準も分かるような分からないようなもので、実はどんな人にでも「あ、これは自分にも当てはまるな」と感じるような部分があるからではないでしょうか。下手に「あ、私もそういうとこある!」と共感できてしまうことで「でも、私は我慢できるのに・・・。」と変に不公平感を感じてしまう。でも、結局、診断が出る人と出ない人の境界は、そういった傾向が生活に支障が出るレベルの強度で表出しているか、いないかなのでしょうね。
障害やスペシャルニーズの話に限らず、種々の「多様性の許容」の話題に触れる時いつも思うことがあります。それは、「私は我慢してるのに」→「だからお前もしろよ」という「負の押し付け」が互いの理解を阻んではいまいかということです。「さと」ちゃんの生育歴に関するお母さんの記述で、小学校や幼稚園の先生が「お母さんが甘やかしている、だから駄目なんだ」と言われるシーンがいくつか出てきますが、これらの人の発言の裏にあるのは「私は頑張って集団のルールを許容している。だから、お前もそうするべき、それがお前のため」といった、まさに親切を装った「押し付け」なのではないかと。それが「みんなで我慢するのはやめようよ」とは、なぜならないのか。・・・きっと、みんなにそんな余裕がないせいなのでしょうけど、本を読む余裕がある古本屋的には「みんなで楽しく生きる方にエネルギーを使おうよ」と言いたくて仕方ないのでした。
ASの定義の曖昧さや、定義されている傾向の表出の強弱によって、同じASと診断されている人同士にも一見した特徴の差異がかなりあるようです。本書の「さと」ちゃんは、あくまでASの一事例です。でも、本人が「私のような子どもたちや私のことを変と思わないで、きちんと理解、応援してほしいです」(帯より)と言っているように、彼らを理解する入門書として本書をおすすめします。
今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!