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スタッフブログ 買取日記

2021/03/25

資格(IB)・小説などの洋書の買取 「Convenience Store Woman」

今回は、IB(国際バカロレア)の高校履修内容(Diploma/ディプロマ)の試験に関するものや、小説などの洋書を買取いたしました。以下に特に良い査定額をお付けできたものを紹介します。

「Chemistry for the IB Diploma Exam Preparation Guide」
「Mathematics for the IB Diploma Standard Level Solutions Manual (Maths for the IB Diploma)」
「Essential GCSE Latin」
「Convenience Store Woman」
「Perfume: The Story of a Murderer (Penguin Essentials)」
「The Wall」

などなど。

こちらのリストには載りませんでしたが、小川洋子の「博士の愛した数式」の英訳版「The Housekeeper and the Professor」もお譲りいただいた本の中にありました。

今回ピックアップするのも、日本人作家の作品の英訳版です。それがこちら

「Convenience Store Woman」(2018年、Granta Books)

です。

2016年に発表され、日本でも2018年に文庫版が発売された村田沙耶香著の「コンビニ人間」の英訳版です。2016年に芥川賞を受賞したことでも話題になりました。

表紙に「Years of Service:18」と書いてあるように、主人公は18年間コンビニで働いている36歳女性、独身。36歳の設定にしては表紙の女性の顔写真が若すぎるような気がします。まぁ、欧米ではアジア人なんか、みんな子どもに見えるよね。

・・・ということは置いておいて。

 

わたくし、先日遅ればせながらこの原著を読んだのです。使用されている言葉たちは平易で、日常的で、非常に読みやすかったです。こちらの英訳版も少し読みましたが難しい単語はほとんど使われていないので、そういった意味では読みやすい本なのではないかと思います。

しかし、日本と欧米のコンビニの風景、店員の機敏さ、サービスの徹底ぶりなどはかなりの違いがあるので、こちらの本を読んだ英語圏読者があの日本のコンビニ特有の「空気感」を感じることができるのかは少し疑問でした。本書では主人公が感じるコンビニの「音」が重要なファクターとなっているのですが、実際にあの「音」を耳にした人でないとイメージがしにくいのではないか、と。

本作では36歳のちょっと普通でない独身女性が主人公であるため、フェミニズム的な視点から評価がされている向きもあるようです。確かに、物語では「なんでいい年して結婚してないのか?」「なぜアルバイトではなく、定職に就かないのか」という社会圧を主人公が感じ、そのために婚活目的で入店した男性(お互い愛情なし)と同棲することを決意するのですが、この物語において主人公が抱える生きづらさというのは、それとは一線を画するもののような気がします。(確かに、そういった部分もなくはないですが。)

同じような立場のアラサー女性が「わかる~!」と共感する部分も大いにあるとは思うのですが、私自身が共感したのは子供の頃からちょっと変で周りから浮いてしまう、浮かないように周囲の人の喋り方やファッションを取り入れて武装するなど、周囲から浮かないように「変な」主人公が努力をしている部分でした。そうまでしているのに、普通の姉を熱望する妹や、同化できていたと思っていたコンビニの同僚にも実は馴染めていない主人公の痛々しさが苦しかったです。

ただし、主人公がそれによって苦悩する心理描写は驚くほど少なく、理論的に自分の置かれた状況を分析して淡々と述べているのですが、それがまた主人公の「普通でない部分」を浮き彫りにします。

その理論的・冷静さ故に周りの人間に危害を加えることもないのに、社会からは異物と見られる主人公。何が、どういう点が社会の成員として人を「普通」たらしめるのか、その部分について考えさせられました。

 

英訳版、日本語版、どちらでも読んで損はないと思います。オススメです。

 

今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!

 

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