2020/07/06
科学(生物・物理)、医学(精神・脳)、哲学などの書籍の買取
今回は物理学や生物学など科学分野の書籍や、精神医学や脳医学など医学関連、また哲学関連の書籍などを多数買取いたしました。
以下に特に良い査定額をお付けできた本をご紹介します。
「量子力学の冒険」
「せん妄の臨床 リアルワールド・プラクティス」
「イラストで学ぶ 人工知能概論 (KS情報科学専門書)」
「脳の情報表現―ニューロン・ネットワーク・数理モデル」
「恥の心理学―傷つく自己」
「笑いを科学する―ユーモア・サイエンスへの招待」
「言葉と物―人文科学の考古学」
「日常語の精神医学」
「分子生物学の軌跡―パイオニアたちのひらめきの瞬間」
「こんなとき私はどうしてきたか (シリーズ ケアをひらく)」
「世界内存在―『存在と時間』における日常性の解釈学」
「生存する脳―心と脳と身体の神秘」
「量子進化―脳と進化の謎を量子力学が解く!」
「アインシュタイン vs. 量子力学: ミクロ世界の実在をめぐる熾烈な知的バトル」
「量子力学で生命の謎を解く」
「ヘーゲルの未来―可塑性・時間性・弁証法」
「エントロピーと秩序―熱力学第二法則への招待」
「顔 (百年文庫)」
「アインシュタイン選集 1 ―特殊相対性理論・量子論・ブラウン運動―」
「ウェーブレットの基礎 (Waveletとその応用シリーズ)」
「精神力動的精神医学1理論編」
などなど。
どの本も比較的新しく、題名からして好奇心をくすぐられるものが多かったですね。
その中でも特に気になった本がこちら
「アインシュタイン vs. 量子力学: ミクロ世界の実在をめぐる熾烈な知的バトル」(2015年)
です。
著者は森田邦久氏。本書巻末の筆者紹介(当時)によれば、2013年から九州大学基幹教育院准教授を務められており、専門は科学哲学及び科学史のようですね。改めて調べてみたところでは、現在は大阪大学大学院にお勤めのようですが、研究室名もズバリ「科学哲学研究室」。この道では有名な方のようです。
アインシュタインといえば、どちらかといえば、量子力学の誕生に寄与したような印象があるのですが、このタイトルには意外性を感じました。
しかし、量子力学の発展に伴い、その立場は少し異なっていったようです。
以下は本書カバー折返しからの引用です。
【アインシュタインは量子力学建設に大きく寄与したが,やがて最強の反対者となる.「神はサイコロを振らない」「だれも見ていないときには月は存在しないのか」「気味の悪い遠隔作用」という彼の言葉は,量子力学の「非因果性」「非実在性」「非局所性」に対する不満であった.それらを認めれば物理学が不可能になってしまう! そう考えたアインシュタインは量子力学の不完全さを指摘する思考実験を次々と繰り出す.それを受けて立つボーアとの科学的にも哲学的も意義深い論争を中心に,量子力学発展の歴史を丹念に追いながら,物理学者アインシュタインが一貫して求めていたものを浮かび上がらせる.そしてさらには,アインシュタインの要求と量子力学の完全性を両立させる新しい解釈に挑む.】
アインシュタインといえば素人でも知っている名前なので割愛しますが、もうひとりの登場人物(カバー写真の人物でもあります)ボーアについてここで少し補完(いや、詳しい方には蛇足になるとは思いますが)します。
ニールス・ボーアは1885年生まれ、1962年没の物理学者です。前期量子論の展開を指導、量子力学の確立に貢献しました。自らの名を冠したボーア原子模型を作成し、それは従来のラザフォード原子模型の欠点を補うもので、水素原子の実験結果を裏付けるものでもありました。そうした功績が認められて、1922年にはノーベル物理学賞を受賞しています。
カバー折返しから引用中のアインシュタインの言葉、「神はサイコロを振らない」に対して、「アインシュタインよ、神が何をなさるかを貴方がかたるなかれ」と反論したエピソードは有名です。
なんとなく、古臭い学説に固執する老害=アインシュタイン VS. 新しい風、量子力学の若手=ボーア
という単純な構図でドラマ化してしまいそうになりますが、実はアインシュタインがノーベル賞を受賞したのも1921年でボーアのたった1年前ですし、年齢的にもアインシュタインが6歳上に過ぎないのですよね。そう考えると、ボーアだって、もっと一般的な知名度が高くても良いのではないかと思ってしまいます。だって、あのアインシュタインと堂々たる論戦を繰り広げているのですから。
その詳しい内容はもちろん、本書を読んでいただくとして、本書のおおまかな流れは以下のようになっています。
1.量子論の創始者としてのアインシュタイン
2.量子力学の誕生
3.量子力学の反対者としてのアインシュタイン
○可動式二重スリットの思考実験
○光子箱の思考実験
○EPRの思考実験
4.アインシュタインはまちがっていたのか
筆者の結びでは、アインシュタインの主張は一部正しく、一部は誤っていたという見解を述べていますが、どこがどうなってその結論に至ったのかについては、物理学に詳しい方に是非読んでいただきたいと思います。ただ、量子力学に絡む発見はまだ新しいものが続々と報告されており、それもいつかひっくり返る可能性は否定できませんが。
わたしは・・・もう少し基本的な知識をつけてから、もう一度本書にはチャレンジしたいと思います(苦笑)。
今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!