2020/07/01
美術関連の書籍を中心に買取いたしました
今回は美術・アートやビジネス、文学他の書籍を買取いたしました。その中でも特に良い査定額をおつけできた本を紹介致します。
「新装版 解体新書 (講談社学術文庫)」
「マンガで読み解く 道は開ける」
「絵画 新たなる物語のために」
「新1分間マネジャー――部下を成長させる3つの秘訣」
「絵で読む漢字のなりたち」
「問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる」
「レイラインハンター ~日本の地霊を探訪する~」
「衝撃の絵師 月岡芳年」
「新版 色の名前507―来歴から雑学、色データまで 日本の色、世界の色が見て読んでわかる」
「経営理念の考え方・つくり方」
「しめかざり (たくさんのふしぎ傑作集)」
「ARTcollectors'(アートコレクターズ) 2017年 9 月号」
などなど。
今回特に気になった本はこちら
「衝撃の絵師 月岡芳年」(2011年初版、手元のものは 2013年 第3刷)
です。
いや、もう表紙からして衝撃ですね。。。
こちらの月岡芳年についての略歴に少し触れますと、1839年生まれ1892年没の江戸後期から明治にかけて活躍した絵師です。歌川国芳に師事し、兄弟弟子には河鍋暁斎などがいます。
本書では月岡の作風を大きく6つに分け、それぞれの章ごとに紹介しています。
第一章では、月岡の代名詞、血みどろの無残絵(表紙の「奥州安達がはらひとつ屋の図」もこちらに含まれます)、第二章では「○○そうな女」として「風俗三十二相」シリーズの美人画を、第三章ではダイナミックな英雄画、第四章では異形のものたちを描いた「新形三十六怪撰」、第五章では「狂おしき色恋」として色恋沙汰を背景にもつストーリー性のある絵を、第六章ではまた異形のものの絵なのですが、こちらは「和漢百物語」シリーズの絵を紹介しています。
どうしてもその衝撃度や、江戸川乱歩や三島由紀夫などに愛された画家というイメージから、第一章で紹介されている「無残絵」が印象に残りがちな月岡ですが、第二章の美人絵などは作家の永井荷風が高く評価していたようです。その画風からは美しさのみでなく、どこかしら可愛らしさやコミカルさも感じられ、さすがは国芳の弟子といったところでしょうか。
第四、六章の怪異の姿には兄弟弟子の暁斎の画風の香りも漂っているように思います。
なお、当店の「販売用ホームページ」にて販売中の本「Shinsengumi: The Shogun’s Last Samurai Corps」の表紙にも甲州勝沼駅於近藤勇驍勇之図」(幕末、甲州勝沼の戦いにおける、新選組の近藤勇を描いたもの)という月岡の絵が使用されています。今回ご紹介させていただいた本には掲載がないようですが、分類上は第三章の「英雄図」に入るでしょうか。
この英雄画などにおける国芳や芳年の一門の構図のダイナミックさは、現在のアニメや漫画を彷彿とさせる部分もあり、カバー折り込みにある「「最後の浮世絵師」にして「最初のイラストレーター」」という評価表現も、思わず納得してしまいます。
そして、構図のとり方のみでなく、その描写の正確さ、精緻さも特筆すべき点かと思います。デザイン化をして簡略に描写しているところもあれば、細かい線の書き込みには確かなデッサン力を感じますし、ぱっと見の衝撃のみで評価されるには勿体ないと思えました。
一時期、画家としての活動が極端に減った時期もある芳年ですが、多くの弟子をかかえており、またその弟子が芳年の確かな画力を継承、発展させていったことも、近年芳年の作品がまた再評価されることにつながっているのでしょう。
こちらの本では残念ながら紙面の関係上、紹介されていない名品もたくさんありますので、こちらの本を入門編として、さらに深い芳年ワールドにハマってみるのもオススメです。
今回もたくさんの良書をお譲りいただき、ありがとうございました!