2020/06/16
政治・経済・社会学・哲学など様々なジャンルの書籍を買取いたしました
今回は様々な本の買取となりました。政治・経済・社会学・哲学や美術・教育に至るまで幅広い種類のものがありました。
大雑把に言ってしまえば、「思想」ジャンルに入るものが多いのかもしれませんが、具体的には以下のような本に良い査定額をお付けすることができました。
「山の手「成城」の社会史 都市・ミドルクラス・文化」
「ジャック・デリダ――死後の生を与える」
「追跡 金正男暗殺」
「人は語り続けるとき,考えていない: 対話と思考の哲学」
「孤塁 双葉郡消防士たちの3.11」
「点・線・面」
「芸術(アルス)と生政治(ビオス)」
「社会科学と因果分析: ウェーバーの方法論から知の現在へ」
「日本再生の基軸――平成の晩鐘と令和の本質的課題」
「怒りていう、逃亡には非ず―日本赤軍コマンド泉水博の流転」
「叛逆老人は死なず」
「戦後日本政治の総括」
「よりよき世界へ――資本主義に代わりうる経済システムをめぐる旅」
「パブリック・リレーションズの歴史社会学――アメリカと日本における〈企業自我〉の構築」
「風景画の出現―ヨーロッパ美術史講義 (岩波セミナーブックス)」
「論語―心の鏡 (書物誕生-あたらしい古典入門)」
「変容する社会と教育のゆくえ (教育社会学のフロンティア 2)」
「公共圏に挑戦する宗教――ポスト世俗化時代における共棲のために」
「社会科学のためのデータ分析入門(上)」
「Cultures of Violence: Interpersonal Violence in Historical Perspective」
「A New History of Shinto (Wiley Blackwell Brief Histories of Religion)」
「農業経済学 第5版 (岩波テキストブックス)」
「震災と市民2 支援とケア」
「「アラブの春」以後のイスラーム主義運動」
などなど。比較的発行年が最近でキレイな書籍が目立ちました。
さて、この中で今回注目させていただいたのはこちら
「点・線・面」(2020年2月 第1刷 岩波書店)
です。一瞬、哲学書、はたまた数学書か物理学書かな?と思いましたが、著者は今をときめく建築家、隈研吾氏です。
隈氏は2004年に「負ける建築」という本を出版しており、本書はその本で提示した「負ける建築」とは何かをより具体的に述べることを目的として書き始めたことを「はじめに」で述べています。本書の前にも2008年には「自然な建築」、2013年「小さな建築」と「負ける建築」に連なる著作を発表していますが、本書はそこにさらに深い考察に基づいた建築哲学を展開しています。
最初に哲学?数学書?と感じたのも無理からぬ話で、その思想の根拠に美術評論家、哲学者や量子力学の話まで絡んでくるのですから、一線で活躍される建築家の見識の広さには驚かされます。本書のタイトルからしても、画家で美術評論家であったカンディンスキーの著作(「点・線・画 -抽象芸術の基礎」)からアイディアを得ています。氏のカンディンスキーへのリスペクトの深さが垣間見える部分ですね。考えてみれば建築はアートであり、それでいて人を入れる強度も要求される構造物を組み立てる数学的な作業もあり、素材にも精通する物理学者でもあるのですがら、博識にもなるわけですよね。改めてすごい職業です。
2004年の「負ける建築」以降は特に、氏はヴォリュームの解体に主眼を おいた建築をしているとしていますが、端的にいうと、コンクリートに代表されるような閉鎖された面で覆う建築ではなく、小さな素材(まさに、点や線など)を組合せた建築を作るということになるでしょう。
最近でいうと、国立競技場も隈氏の手によるもので、確かにあのような大きな建物であっても、近くで見れば小さな線の無数の集合体であることがわかります。特に2000年以降の氏の作品には、見た目のデザインは違っても隈研吾的建築様式としての一貫した哲学が感じられます。本書はそのような隈式建築に至ったバックグラウンドを理解するのに、うってつけの一冊だと思います。
当社は八王子某所にあるのですが、京王線の高尾山口駅の駅舎も隈研吾氏の設計によるものです。せっかく近くにあるのに、実はじっくり味わったことがありません。世の中が落ち着いたら、良い季節に感慨を持って訪れたいものです。
今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!