2019/07/22
芸術関連書籍買取いたしました
買取日記ジャンル
今回は芸術関連を中心に多数の書籍を買取いたしました。以下に良い査定額をお付けできた本をご紹介します。
「ボードレール批評〈2〉美術批評2・音楽批評 (ちくま学芸文庫)」
「興亡の世界史 ケルトの水脈 (講談社学術文庫)」
「京都、パリ ―この美しくもイケズな街」
「逸脱の文化史:近代の〈女らしさ〉と〈男らしさ〉」
「ワインのフランス語[改訂版]」「ジャポニスム―幻想の日本」
「『野生の思考』 2016年12月 (100分 de 名著)」
「プラトン『饗宴』 2013年7月 (100分 de 名著)」
「名画と解剖学 『マダムX』にはなぜ鎖骨がないのか?」「北斎絵事典 完全版」
「Paris Changing: Revisiting Eugene Atget’s Paris」
「図録 松方コレクション展 国立西洋美術館会館60周年記念 2019」
「図録 特別展 国宝 東寺 空海と仏像曼荼羅 東京国立博物館 2019」
「図録 奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド 東京都美術館 2019」
「図録 クリムト展 ウィーンと日本 1900 東京都美術館 Vienna-Japan 1900 2019年」
上記のリストをご覧になると分かるように、西洋絵画や日本絵画の本だけでなく、NHKの100分 de 名著のテキストなど文学関連のものもありますね。
リスト最後の方には図録がずらっと並んでおりますが、どれも新しいもので大変キレイな状態でした。ついこの間まで開催されていた展覧会のものもありますね。私も行きたいと思いつつ、うっかり行きそこなってしまい悔しい思いをしたものもありまして、査定ついでに思わず眺めてしまいました。こういった展覧会の図録などには、いわゆる「ISBNコード」がついていないことも多く、古書店での買取を断られてしまうことがありますが、当店では状態・人気度などを見て買い取らせていただくことも多々あります。事前査定も可能ですので、そういった書籍をお持ちの方もお気軽にお問合せくださいね。
さて、いつものように査定中に気になった本をご紹介いたします。今回の本はこちら。
「名画と解剖学 『マダムX』にはなぜ鎖骨がないのか?」
です。
いきなり気になる題名ですね。名画と「解剖学」の取り合わせです。それに「なぜ鎖骨がない?」と謎を投げかけられれば、その答えを知りたくなるのが人情ですよね。表紙にいる女性がその「マダムX」なのですが、こちらの絵の芸術的な作品解説、解剖学的解説を皮切りに、本著では29作品についてその両面、あるいは歴史的な解説も交えつつ作品を味わえるようになっています。
本書の著者、原島広至(はらしま ひろし)氏は歴史・サイエンスライターにして、イラストレーターという異色の肩書の持ち主です。こういった美術関連のものより、「骨単」「肉単」「脳単」などの「ギリシャ語・ラテン語 (語源から覚える解剖学英単語集)シリーズ」の著者といったほうが医療業界周辺の方にはピンとくるかも知れません。
本書でも骨や筋肉などの正式名称など、普段聞きなれない解剖学用語が出てくるのですが、一般の人でもさらっと読むことができます。また、1つ1つの作品に対してあまり詳細な情報は載せられてはいないものの、解説の切り口は美術史、歴史学にも及んでおり、そのどれもが絡まり合わないように分かりやすく説明されているのですから、著者のライティングセンスはすごいと思います。それも、上記のような一風変わった肩書を可能にする豊かな知識量があればこそでしょう。紹介解説されている作品も洋の東西を問わないばかりか、時代も紀元前のエジプトのものや洞穴に残された古代人の手形、19世紀の新古典主義やら浮世絵まで様々です。また、解剖学解説もヒトの身体に対するものだけでなく、最終章では動物が登場する作品についての解説で、動物の身体構造についてまで述べられています。本書を読みながら、どこか一箇所は思わず「へーっ!」と言ってしまうトリビアにぶつかるのではないでしょうか。
ただ、既述したように一つ一つの作品に多くの紙面を割いてはいないこと、全ての作品については「マダムX」の絵に対するような「疑問→考察→推測」という流れがないのが物足りない、かつ、ちょっと残念ですが、読みやすさを考慮すると仕方ないのかも知れません。
本文中、ロダンの「考える人」についての解説で「ロダンの彫刻に見られる筋肉について語るなら、とても一冊の本におさまりきらないであろう。」と著者自身が述べているのですが、そのロダン彫刻に対する詳細な分析の集大成が出版された暁には是非、もっと濃厚な解剖学的解説を読んでみたいと思いました。
今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!