2019/06/21
経済、歴史、社会学書籍買取いたしました。
今回は経済学を中心に歴史や社会学に関する書籍を多数買取させていただきました。「帝国主義」、「資本主義」、「ロシア(またはソ連)」、「経済史」という文言が多く目につきました。
まず、以下に良い査定額をお付けできた本をご紹介します。
「西洋経済史学」
「比較経済発展論―歴史的アプローチ (一橋大学経済研究叢書)」
「資本主義の起源と「西洋の勃興」」
「保守革命とナチズム―E.J.ユングの思想とワイマル末期の政治」
「世界経済の成長史1820‐1992年―199カ国を対象とする分析と推計」
「ロシア史を読む」「Social and Cultural Dynamics」
「ロシアの祭り―民衆文化と政治権力 (ユーラシア・ブックレット)」
「新史料で読むロシア史」「イギリス帝国と帝国主義」
「近世日本の経済社会」「ソ連崩壊史―ペレストロイカの教訓」
「社会帝国主義史―イギリスの経験 1895‐1914」
「スターリン―ユーラシアの亡霊」
上記のリストにはたまたま一冊しか入っていませんが、買い取らせていただいた本の中には洋書(英語)もありました。当店では英語で書かれた本についても買取が可能ですので、「自宅の書棚で眠っている洋書があるんだけど、誰か次の人に読んでもらいたい。でも、他店では売れなかった…!」等お悩みがありましたら、是非当店にお譲りください!
さて、今回の買取の中で特に表紙の文字たちの主張が強かったのが「ロシア」という言葉だったのですが、その中でも個人的に気になった本が「ロシアの祭り―民衆文化と政治権力 (ユーラシア・ブックレット)」です。
こちらのユーラシア・ブックレットのシリーズですが、2000年にユーラシア研究会が企画・編集をはじめ、東洋書店から2015年までの間に200号(多い!)が発行されました。残念ながら東洋書店は倒産してしまったのですが、現在では「ユーラシア文庫」と名前を変えて群像社より発刊が続いております。今回の「ロシアの祭り~」は東洋書店時代の2009年6月20日発行の136号目です。
ロシアといえば、現在を見ればすっかりプーチン色(あくまで個人的見解です)ですが、そこから少し前に遡ってみてもドストエフスキーの「罪と罰」的な鬱屈した社会のイメージ(繰り返しますが、あくまで個人的見解です)ですし、そのちょっと前には他の国と一緒にポーランドをむしり取ったこと以外は覚えていないくらい(繰り返しますが、…以下略)、わたしにとっては陽気さを連想させるものからは遠い国です。本書巻末にはブックレット創刊の目的が書かれているのですが、それは、そんな誤解の多いロシアを中心とした「ユーラシア諸国の正しい知識を普及すること」だというのですから、まさに私のような人間向けの本だといえます。
肝心のロシアにおける祭りについてですが、本書ではソ連以前の18世紀から20世紀の農村部における伝統的な祭りから、ソ連時代を経た農村、都市部での祭りへの変容、さらにはそれを経た現在における祭りの意義に言及しています。
ロシア正教にのっとった、さらに言えばそれより古来からの土着信仰・民間信仰に基盤を持つ彩り豊かで季節感に富んだ農村部の祭祀から、ソ連時代の宗教弾圧→イデオロギーに満ち満ちた国家行事としての祭りへの変貌。という流れはいかにもソ連的という感じですが、ソ連時代においても「共同体をまとめるための装置」としての祭りを利用するという形で、正教的な祭りを政治色の強い祝祭、祝日に取り入れていく懐柔策がとられていた部分が意外でした。また、ロシア版のサンタクロース、ジェド・マロースなるキャラクターが紹介されていたり、ソ連崩壊後に国家統一イデオロギーとして再注目される正教教会に歩み寄るプーチンが出てきたりと、どこかしら怖いロシアのイメージがちょっと変わったように思います。その農村共同体の習慣や遊興の様子の説明も生き生きした人々の様子が伝わってくるようで興味深かったです。
クレムリンが遠すぎて、お隣意識の薄くなりがちのロシアですが、昨今国会議員がなんだかんだで揉めた領土問題ひとつを考えてみても、実はもうちょっと知ってみるべき国なんですよね。とりあえず、もしロシア人に会う機会があったら、今度は「ピロシキ、ボルシチ、美味しいよね!」なんて話題だけじゃなくて、「ジェド・マロース、イカすよね!」なんて変化球で異文化交流してみたら素敵なんじゃないかと思いました。
今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!
スタッフN