2019/05/19
芸術、歴史、哲学、経済学等多様なジャンルの書籍買取いたしました。
今回は心理学や哲学的な名著から歴史や経済学、社会学、文化人類学、さらには芸術分野の本まで多様なジャンルの本を買取させていただきました。
その中でも特に良い査定額をお付けできたものを以下にご紹介したいと思います。
「ブッダの実践心理学 第三巻 心所(心の中身)の分析(サンガ文庫) (アビダンマ講義シリーズ) [文庫]」
「時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか」
「大不平等――エレファントカーブが予測する未来」
「正義のフロンティア: 障碍者・外国人・動物という境界を越えて (サピエンティア)」
「辺境から眺める―アイヌが経験する近代」
「フランス植民地主義の歴史―奴隷制廃止から植民地帝国の崩壊まで」
「植民地共和国フランス」「正常と病理 (叢書・ウニベルシタス)」
「他者の受容―多文化社会の政治理論に関する研究 (叢書・ウニベルシタス)」
「絵本の庭へ (児童図書館基本蔵書目録 1)」「祭祀からロマンスへ (叢書・ウニベルシタス)」
「歴史の島々 (叢書・ウニベルシタス)」「マーガレット・ミードとサモア」
「社会理論の現代像―デュルケム、ウェーバー、解釈学、エスノメソドロジー」
「全10巻 春秋社 新装 柳宗悦選集」
などなど。
「全10巻 春秋社 新装 柳宗悦選集」は経年並みの使用感がややありはしますが、柳宗悦の思想がぎゅぎゅっと凝縮されていて、思わず手に取りたくなります。その中でも、個人的には現在関係がギクシャクしている韓国含む朝鮮の美術に注目した第4巻「朝鮮とその藝術」が気になります。朝鮮磁器って綺麗ですよね~。
ですが、今回特にピックアップしたい本はこちら。
「大不平等――エレファントカーブが予測する未来」です。
2017年6月発行の新しい書籍です。裏表紙ではBREXITも取り上げられているなど、まさに現在進行形の世界情勢分析の書ですね。
こちらの本は、ブランコ・ミラノヴィッチ氏が2016年にHarverd University Press から出版したものの訳書になるのですが、元々のタイトルは「GLOBAL INEQUALITY a new approach for the age of globalization」で、グローバル化時代における地球規模の不平等についての新理論を展開している本だとわかります。日本語のタイトルでは「グローバリゼーション」というキィワードが抜け落ちてしまっているのが残念ですが、ここが著者の論じたいポイントになっております。それゆえ、各論として第2章では各国内の不平等についてとりあげつつ、第4章「今世紀および来世紀のグローバルな不平等」、第5章「次はどうなるのか ―将来の所得不平等とグローバリゼーションについての10の考察」の結びでは再び全世界的な不平等について論じて結んでいます。わが国の不平等の拡大について2章で個別に取り上げられている部分もありますし、全体的に他人事ではないと思って読むと断然重みが違ってきますよね。
さて、日本語タイトルにある「エレファントカーブ」は横軸に所得、縦軸に1988年から2008年までの実質所得の累積の伸びをとり、どの所得層がどのくらいその所得を伸ばしたのかを示したグラフの線形を名付けてそう呼んだものです。(表紙の蛍光ピンクのラインがその形です。写真ではわかりづらいですが、実物を手に取っていただくと象のエンボスが施されています!装丁デザインが素晴らしいですね。)
経済系の書籍で「新しいなんたら理論」とか難しげなタイトルがついていると、データの羅列や分析手法の説明に紙面が割かれており理解が追い付かないことがままあるのですが、こちらの書籍は一般人にも大変分かりやすく書かれていると思います。ただ、前書きの部分で著者自身も言っているように、最終章に近づくほどに著者の直感と手触りによる見解が述べられていて、裏付けがないという印象が少々ありました。一般向けに書かれたものなので、ある程度は仕方ないとは思いますが、「将来どうなるの?!」という部分こそ、読者が一番知りたいことだと思うので、それはちょっと残念ですかね。
こちらの本の終章の最後は衝撃的な一行で締めくくられます。それを言っちゃあ、お終いだぜ……と突っ込みたくなりますが、著者をその結論に至らしめる世界的な格差「不平等」の根の深さ、複雑さを感じることができるだけでも、価値ある一冊なのではないでしょうか。
今回も良書をたくさんお譲りいただき、ありがとうございました!